窓の外を眺める彼女は 永瀬正敏が撮ったロンドン (188)
國際的俳優で、寫真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた寫真の數々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。今回は英國のロンドンで撮った寫真。仕事で訪れたこの地で、撮影に同行してくれた女性が、わずかな待ち時間に窓の外を見つめるその瞬間に、永瀬さんはカメラを向けたのでした。

3度目のイギリス?ロンドン。
1990年代初頭、visual art book等を制作するためにこの地を訪れた。
ロンドンは中學時代から僕が影響を受けた、音楽やファッションの誕生した土地、憧れの場所のひとつでもある。
この時のvisual art book等のコンセプトデザインとオーガナイズは、
世界の最先端を走り続ける「i-D Magazine」の創始者、テリー?ジョーンズ編集長にお願いし、ほぼ休みなしで10日間ぐらい滯在した(と思う。もう少し長かったかもしれない)。
次から次へとあふれ出すテリーさんのアイデアを形にするため、數名のカメラマンさんとスタイリストさんが息をつく暇もないぐらい準備と撮影に汗を流してくれた。
目まぐるしく進んでいく日々、その瞬間瞬間を追うために、テリーさんはご自身の娘さんで、カメラをやり始めたばかりの(そのように記憶している)ケイトさんを撮影に同行させてくれていた。
ケイトさんは撮影だけではなく、ほかのカメラマンさんのシューティングでは一緒にモデルとしても登場してくれたり、本當に何から何までお世話になった。
もしかすると、彼女が一番大変だったかもしれない……。
撮影のほんの少しの待ち時間。
僕たちはとあるカフェで待機していた。
その時、窓際で一瞬たたずんでいた彼女の姿が目に入ってきた。
彼女は飲み物も頼まず、外の風景をじっと眺めていた。
椅子に座って一息ついてもいいシチュエーションでも、
彼女の手にはカメラが握られている。
外の風景を眺めている彼女は、何か撮影ポイントでも探しているのだろうか
薄暗い店內、ガラス窓にペイントされている逆文字のアルファベット、
彼女の姿を優しく照らす外の光……そして握られたカメラ。
僕はこの旅で、初めてカメラを構えた。
彼女もまた、夢中でカメラを握っていたのでしょうね。
カメラが好きな証拠ですね!
永瀬さんと同じで?
寫真を撮ることが大好きな永瀬さんが憧れだったロンドンに來て初めて撮った寫真!
やっぱり昔から思わず撮りたくなるのは〝人?だったんだなぁと改めて思いました。