將棋のトップ棋士の一人、佐藤天彥九段(34)が、対局中のマスク不著用を理由に反則負けとなる異例の出來事が起きた。日本將棋連盟の規定に違反したと判斷された。そもそも、対局中に言葉を交わさない將棋でなぜそのようなルールが運用されるようになったのか。
反則負けがあったのは、第81期將棋名人戦?A級順位戦(朝日新聞社、毎日新聞社主催)の4回戦で、10月28日に東京都渋谷區の將棋會館で行われた。佐藤九段は午前10時の対局開始からつけていたマスクを、午後11時過ぎから継続的に外した。30分ほど経ち、対戦相手の永瀬拓矢王座(30)が対局室の外で主催者側に「(不著用の時間が)長すぎる。反則負けではないか」と指摘。連絡を受けた連盟の佐藤康光會長(53)と鈴木大介常務理事(48)が協議し、連盟の常務會として反則負けを決定した。朝日新聞と毎日新聞の擔當記者も同意した。
「反則」明記のルール
裁定の根拠となったのが、「対局中は、一時的な場合を除き、マスクを著用しなければならない」「(反した時は)反則負けとする」と定めた臨時対局規定だ。コロナ禍の當初、連盟は「マスクをつけて考えていると息苦しくなる」などの聲に配慮して、マスクの著用を「推奨する」としていた。しかし、感染の再拡大に加え、「マスクを著用していない対局者がいる」という指摘が相次いだため、今年2月1日からこの規定の運用を始めた。マスク不著用による反則負けは、これが初めてだった。
マスク不著用で反則という厳しいルールの成り立ち、佐藤天彥九段の反論。記事の後半では、將棋界特有の対局環境についてもご紹介します。
連盟は10月31日、今回の…